「レントゲン撮影時の防護エプロンの着用につきまして」

当院のレントゲン装置は最新のデジタル機器を使用しており旧来のフィルム式のアナログ装置に対して非常に少ない被曝量で安全に撮影することが出来る様になりました。日本放射線学会の指針はもとより世界的にも防護エプロンの着用は現在原則不要という取扱いに変化しております。

放射線による人体への影響は妊婦や子供においてもほとんど無視できる程度とされていますが、ご不安な方やご希望の方については防護エプロンの用意がありますので遠慮無くスタッフにお申し付けください。

実は、当院においても以前は撮影の際に鉛の入った防護エプロンを着用して撮影をしていましたので、「防護エプロンを着けなくて大丈夫?」と不安を感じる方もいるかもしれません。

これは手間を省いたり、安全対策をしなくなった、ということではなく、歯科のレントゲン機器や撮影技術が進歩し、必要な範囲をできるだけ少ない放射線量で撮影できるようになったためです。

日本歯科放射線学会の指針も変更になり、それに沿った形で当院の対応も変更いたしました。 日本放射線学会の指針や、松本歯科大学、長野市民病院をはじめとする医療機関が防護服をつけない背景には、科学的な根拠があります。

1. 放射線学会の見解

日本歯科放射線学会の指針(歯科エックス線撮影における防護エプロン使用についての指針)では、撮影方法ごとに以下のように考えられています。

  • パノラマエックス線撮影(お口全体をぐるっと撮る撮影):
「防護エプロンは使用すべきではない」とされています。
歯科用の放射線は非常に微量で、お腹など体幹部へ飛ぶ放射線(散乱線)はほとんどありません。むしろ、防護エプロンを着用することでエプロンの影が画像に映り込んでしまい、あごや歯の診断の邪魔になって「再撮影(撮り直し)」になるリスクがあります。再撮影になると余計に被ばく量が増えるため、着用しない方が安全だと判断されています。
  • 口内法エックス線撮影(小さなフィルムを口に入れて数本の歯を撮る撮影):
法令やガイドラインによる着用の義務はありません。同学会では「防護エプロンの装着は、患者の被ばく線量を低減するためというより、患者の心理面(安心感)への配慮のためと考えた方が適切である」としています。

また、国際的にも2024年にアメリカ歯科医師会(ADA)などが「最新のデジタル撮影において防護エプロンの使用はもはや推奨されない」という指針を出しており、世界的なスタンダードとなっています。

2. なぜ防護服なしでも安全なのか?

  • デジタル化による線量の大幅な低減:
現代の歯科レントゲンはデジタル化(センサーやIT技術の進歩)が進み、昔のフィルム撮影に比べて必要な放射線量が極めて少なくなっています。 
  • 日常生活の被ばくよりも遥かに少ない:
歯科用レントゲン1回あたりの放射線量は約0.01~0.03ミリシーベルトです。これは、人間が普通に生活していて自然界から受ける年間放射線量(日本平均で約1.5ミリシーベルト)のほんの数日~数週間分にすぎず、体に影響が出るレベル(100ミリシーベルト以上)とは桁違いに低い数値です。 
  • 体内の散乱線は防げない:
エックス線が体内でぶつかって発生する「散乱線」は体の内側を伝わるため、外側に鉛のエプロンを巻いても防ぐ効果がほとんどありません。

松本歯科大学などの大学病院や先進的な歯科医院が防護エプロンを廃止しているのは、決して「手抜き」や「危険な簡略化」ではなく、「不要な撮り直しを防ぎ、最新の科学的根拠に基づいて患者さんの負担を減らすため」の正しい医療処置です。

実は、当院においても以前は撮影の際に鉛の入った防護エプロンを着用して撮影をしていましたが、日本歯科放射線学会の指針も変更になり、それに沿った形で当院の対応も変更いたしました。

それでも、過去の習慣から「ないと不安」と感じる患者さんに対しては希望に応じて着用をして頂くなど柔軟な対応をお取りします。

Q&A

妊娠中の歯科レントゲン撮影は問題有りませんか?

歯科のレントゲン撮影は主に口やあごの周辺を撮影するため、腹部から離れており、ほとんど影響はないとされています。ただし、妊娠中または妊娠の可能性がある方は、撮影前に必ずお伝えください。撮影の必要性を確認したうえで慎重に判断します。

子どもに対する歯科レントゲン撮影時も防護エプロンなしで大丈夫ですか?

お子さまの場合も指針では防護エプロンが必ず必要とはされていません。ただし必要なときにのみ撮影することはとても重要です。心配な場合は、必要性について説明を受ける事が出来ます。

参考文献

日本歯科放射線学会防護委員会「歯科エックス線撮影における防護エプロン使用についての指針